衆議院-厚生労働委員会 2005年(平成17年)04月20日




 「介護保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三〇号)」に対する質疑

○鴨下委員長

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。本多平直君。

○本多委員

 民主党の本多平直です。 まず、法案の内容に入ります前に、私、実は、前回の質問をさせていただいている途中で、大臣の答弁に納得いかないということで質問を中断させていただいたという経緯があります。そのことについて一言確認をさせていただきたいと思います。

 きょうお出しをいただきましたモデル事業の分析、これを出せということで私は押し問答をしまして、質問時間をかなり使う結果になりました。私の質問の中では、大臣は出さない、出さないと。それは政省令をつくるときまでに出すからいいんだということで突っぱねられまして、私はそれで不満だということで審議が中断したということでございます。

 その後、我が党の長妻委員が質問に立って、その中で、ようやくきょうの委員会の審議前にこれを出すということを大臣から御答弁をいただけたわけなんですが、もちろんそのこと自体はよかったと思っておるんですけれども、あれだけ長い時間をかけて、ほかの質問事項を削って聞いているものに対して、後の委員のときに簡単にそうやってオーケーするものなら、事前にオーケーしてもらわないと、私の質問妨害なんですよ。そのことについてどうお考えですか。

○尾辻国務大臣 今改めて前回の速記録を読んでおるのでありますけれども、出さないと申し上げてはいないと思います。ただ、できるだけ早く出させていただきたいということを申し上げたところでありますから、前回私が委員に対して、特別違うといいますか、あるいは失礼な答弁をしたとは思っていないところであります。

○本多委員

 余りこの話をしたくないんですが、政省令までに出すという答弁だったんですね。そんなことじゃ、つまり法案の審議のためにこれが要るんだと私は主張したんですよ。ところが大臣は、政省令の、つまり法案が通った後の政省令をつくるときにこれは参考にするんだから、分析はそれまでに委員会に出すと。それじゃ納得いかないということを言っていたんです。ところが、長妻委員との質疑の中では出てきたわけですよ。こういうふうに最初から出るものなら、ちゃんと答弁で私のときに出すと言うべきだったんじゃないんですか。

○尾辻国務大臣

 あのときの私どもの、こちら側といいますか省の方のやりとりを申し上げますと、委員からそういう御質疑がございましたので、私は、できるだけ早く出したいということは申し上げたつもりであります。ただ、それがいつまでかということでありましたから、いつまで出せるかなということをこちらでも、お気づきだったと思いますが、私どもも内部の話をしておりました。

 ただ、いつまで出せるという内部の自信がまだありませんでしたから、委員に対してあのようにお答えいたしましたけれども、だんだん詰めていって、できるだけ早く出そう、このぐらいでは出せるかなというところになったときに実は審議がとまってしまったものですから、委員に直接お答えできなかったということについては改めておわびも申し上げたいと思います。そこのところはおわびを申し上げます。

 ただ、そういう内部のやりとりのいきさつでそうなったということだけは、また御理解もいただきたいと存じます。

○本多委員

 実は、尾辻大臣から委員会の席でもそのような御説明を前回いただいておりまして、私もそのことは納得しておるんです。ですから、その大臣の御答弁で、そのとおりで結構でございます。

 ただ、私、実は、きょうこのことをなぜ聞いたかというと、問題にしたい方がそこの目の前におりまして、委員長なんですけれども、私がそのことに対して、大臣それはおかしいんじゃないか、私のときは出さないと言って長妻さんのときに出すと言ってという抗議に行ったわけですね、委員会が終わった後。そのときに、事もあろうに、そこにいらっしゃる委員長が何と言ったかと申しますと、政治家としての重みが違うんだよという発言をされたんですね。

 これはちょっと委員長にお伺いをしたいんですけれども、長妻委員は先輩ですし、大変質問の追及が鋭いことでも有名な方で、私も、自分に政治家としての重みなんかがまだついては困るので、そんなものがあるとも思っておりませんし、これから徐々に頑張ってつけていきたいと思っておりますけれども、政治家としての重みが違うと大臣の答弁というのは違っていいんですか、委員長。

○鴨下委員長

 委員長は答弁する立場にはありませんけれども、本多委員がそういう意味で大変ある意味で心証を害したということについて、これをおわびを申し上げます。

○本多委員

 おわびをいただきましたので、それは了としますけれども、与野党でこれだけ法案の審議である意味混乱もしている中で、委員長がそういう軽口をたたくということ自体が、委員長としての資質を私は疑いますし、別に自民党の中でも重量級という評判を聞いたことは私ございませんので、私が軽量級であることは認めた上で、委員長からだけはそういうことは言われたくなかったということだけ申し上げておきたいと思います。

 それでは、法案の中身に入りたいと思います。 そういう経緯がありまして、ようやく出していただきましたこのモデル事業の中間報告でございますけれども、読ませていただきましてびっくりいたしました。つまりこれは、これで議論をするより、はっきり言って前回のこちらの生データを見た方がやはりわかりやすいんじゃないか。つまり、これはいろいろ統計学の手法を出されて平均値をとられているようなんです。平均値というか、改善した方が多いということはわかっているんですよ。私たちが問題にしているのは、悪化がいて、悪化の量が無視し得ないほどに大きいのではないかという点を聞いているんですね。 これについて、大臣、どうお考えになりますか。

○尾辻国務大臣

 このたびのデータ、お出しをいたしました。そして、お求めでもございましたので、統計学的な分析も行ったところでございます。

 そうした中で、今回の報告というのは、筋力向上プログラムが介護予防に一定の効果を発揮することは改めて示唆された、こういう報告だというふうに理解をいたしております。(本多委員「悪化の多さを」と呼ぶ)

 ですから、人間ですから、何かやれば、よくなる人もあれば悪くなる人、悪くなるというか悪化する、そういう人たちがゼロにはならない、私はそう思っておりますので、まさに今おっしゃったように、その割合の問題ですが、今回の報告、一言で言うと、やはり一定の効果を発揮するという理解だというふうに考えております。

○本多委員

 例えば、筋力向上の方の全体のデータを見て、いろいろ項目はあるんですけれども、「日常生活機能(身体)」こういうところは大事だと思うんですよ。改善が八十二人いるのは認めます。ですから、その方が、国の事業としてじゃなく、こういうことを自主的にやられて改善したりすることは何もとめないんです。維持の方もまあ問題なしとしましょう。しかし、六十四人悪化しているんですよ。これは、悪化する責任をとれるんですか、事業としてやって。

 これが原因かどうかはもちろん精査が要ると思います。それこそ、もうちょっと時間をかけて調査しないといけないと思いますけれども、筋トレで悪化したとは言い切れないかもしれませんけれども、悪化している人が六十四人もいるんですよ。これはどう責任をとるんですか、国の事業としてして。

○尾辻国務大臣

 いずれにいたしましても、この介護予防サービスというのは、その目的や内容に基づいてより大きな効果が発揮できるようにしていかなきゃならぬわけでございます。

 そういたしますと、例えばこの本事業を通じて得られたデータも、サービスの対象者の選定手法とか提供方法とか、今後さらに検討も進めて、このデータをどういうふうに生かすかということはさらに今後の問題だとは思いますけれども、今回の結果は、申し上げたように、総じて言いますと、筋力向上プログラムが介護予防に一定の効果を発揮することは示されたものだというふうに理解をいたしております。

○本多委員

 一定の効果もある人がいるというふうに言いかえていただいた方がいいんじゃないですか。悪化している人がいるんですから。

○尾辻国務大臣

 ですから、サービスの対象者の選定の手法とか、さらに分析を深める必要はあろうかと思いますけれども、おっしゃったように、悪化した人がいることもまた事実でありますから、そのことを否定するつもりもございません。ただ、そうしたことを全体的にどう見るかという今後の判断だろうというふうに思います。

○本多委員

 対象者のこととか言わない方がいいと私は思いますけれども、これは実はモデル事業なんですよ。日本全国あまねく介護保険で事業化したときよりも丁寧にやっているわけなんですよ。人集めの段階からこれに向いている人を集めて、そして、それぞれトレーナーとかもきちんとついてやって、この結果なんですよ。

 ですから、これを本事業にしたときにこのデータがよくなるという推測はどういうところから出てくるんですか。

○尾辻国務大臣

 ですから、この事業を始めるといたしまして、すべての人にやってくださいということを申し上げるつもりもないわけですから、現場でその事業をやることが適切であると認められる人にやってもらうわけでありますから、そういう人をどういうふうに現場でまた判断してもらうかとか、そういうことにつながる話だということを申し上げているつもりであります。

○本多委員

 今回は適切な人を選んでやらなかったんですか。

○尾辻国務大臣

 ですから、モデル事業ですから、今回はいろいろな人にやっていただいた、こういうことであります。

○本多委員

 では、適切じゃない人にもやらせたんですか、いろいろな人という意味は。

○尾辻国務大臣

 今後の事業展開の参考にするためでございますから、もちろん、一定の基準に基づいてということはお願いいたしましたけれども、モデル事業でありますから、広く多くの方に試していただいた、こういうことでございます。

○本多委員

 では、今後こういうふうに、今回も私は適切な人をやってこういう結果だと思っていたんですけれども、適切じゃない人もやってのデータなんですか、これは。広くやったということでいいんですか、本当に。

○西副大臣

 お答え申し上げます。 今回は公募された方をもとに編成したわけですが、その中で、今回やってみて分析の結果、この筋力向上プログラムにつきましては、例えば脳血管疾患の既往症、これがある方については、その他の疾患の既往症がある方に比べて有効性が低くなっているというようなことも新たにわかっております。そういうことを今後有効に、本実施する場合には考えていく大きな手だてになっていく、こういうふうに思いますので、初めからこの人は有利というか、効果があるとかいうことを必ずしもすべて前提にしたわけではないということを御理解いただきたいと思います。

○本多委員

 では、本実施のときには、大体、八十二人改善して、五十四人維持で、六十四人悪化だとしますよね、一つのデータを見たときに。これは、六十四人分ちゃんと除けるような仕組みをつくっていただけるという理解でいいんですか。

 国でやることなんですから、悪化、維持で、余り効果ないよねあの事業という事業はありますよ、国の中でも。それはなぜ我々が認めているかというと、プラスがあるからです。そして、悪化というのが極めて少ないから、いろいろむだだけれどもプラスもあるからということで、いろいろ国は事業をやっていますよね。それはしようがないんです。ただ、これは悪化が多過ぎるんです。これはちゃんと除けるんですか。除けるスキームをつくれるんですか。

○西副大臣

 まさしくこのデータだけがすべてではございませんけれども、今後、ケアマネジメントなどを通して、少なくとも向上が望みにくい皆さんについては除外するということを次の段階でやっていくということになります。

○本多委員

 このデータがすべてじゃないんだったらまた困るんですよ、話がもとに戻るんですよ。

 私たちは法案の審議をしているので、こういう介護予防というのが皆さん効果ある、効果あると言っていて出してきた例がこれなんですよ。それから、さっきからセレクトして広くやっていると言いますけれども、私たちはこれは逆だと思っていますよ。つまり、意欲あるお年寄りが結構参加しているわけです。それをどう大臣はとらえますか、大臣。

○尾辻国務大臣

 意欲ある方でないと、もちろん最初から参加なさらないというふうに思いますから、そういう意味で、意欲ある方が今度のモデル事業の対象になったということは、そういう傾向があるだろうということはそのとおりだと思います。

 ただ、意欲があるということと、筋トレという言葉が使われておりますから筋トレという言葉にさせていただきますと、では向いているか向いていないかというのはまた、こうしたモデル事業の中で判断できること、また新しくわかったこと、今、脳血管疾患の方についての話は副大臣からも申し上げましたけれども、そういうまただんだんわかってくることもありますから、そうしたことをさらに参考にして今後の事業をしていく、こういうことでございます。

○本多委員

 これは、皆さん、法律を通したときに、私はこんなことをやるべきじゃないと思っていますけれども、やるんだったら当然この悪化というところを極めて少なくしてもらわないと、人の命と健康にかかわることですから当然です。

 しかし、ここまで多いんですから、皆さんが幾ら施策を講じたとしても、悪化する人は残ると思います。そのときにはだれが責任をとるんですか。国なんですか、厚生労働大臣なんですか、それとも市町村長なんですか、それとも施設の長なんですか。

○尾辻国務大臣

 申し上げておりますように、最終的にはまさに現場での御判断でありますから、利用なさる方に一番いいと思われるやり方で、現場でお決めいただいてやってもらうということになるということを申し上げたいと存じます。

○本多委員

 国とか自治体には責任がない。こういう制度の枠組みをつくって、こういうメニューを出して介護保険の給付をするということを決めた国とかには責任がないということでいいんですか、個別の起こった悪化の事象に対しては。

○尾辻国務大臣

 ここで言っております悪化というのは、これは要介護度の話でございますから、何か容体があって、容体と言いましたのは例えば病気の容体という意味で申し上げましたけれども、そうしたものが悪化したというような話とはまた違う話でございますので、ぜひ、ここで言う悪化というのはそういう意味だというふうに御理解いただきたいと存じます。

○本多委員

 そういう項目もありますけれども、心の健康が悪化しているとか、体の痛みが悪化しているという項目もあるんですよ。痛みが悪化とか心の健康が悪化というのは、明らかに私は損害賠償の対象になるような話も起こり得てくると思いますから、今の施設にそういう責任を押しつけるということですから、これは当然、施設の方もこんなものを導入しても慎重にならざるを得なくなって、本当にこんなものが事業として成り立つのかどうかという疑問をしっかりと呈させていただきたいと思います。

 そして、この調査のそもそもの私の疑問なんですけれども、私も大昔、文系の人間ですけれども、理科を勉強したときに、こういう実験をやるときは、皆さんが責められているのを逃げ道があるとしたら、全然こういうことをしないお年寄りの群を使って調査をして、大体三カ月たつとお年寄りの健康というのはどうなるものなんだ、いろいろな体調の変化もあります、ですから、改善とか悪化とかいうのをそういう調査で出す。

 もしくは、こんなおかしな筋トレじゃなくて、普通の今デイサービスでやっているような散歩をするとかカラオケを歌うとか、そういうことで三カ月過ごしたお年寄りはどんな結果なのか、これを見せてもらわないと、対照群がない実験というのは実験じゃないというふうに私は化学や理科で習ったんですけれども、どうしてそういう対照群のない実験なんですか、これは。

○尾辻国務大臣

 こうした新しいメニューを加えようということで、そのメニューに対するモデル事業でございますから、そうした具体的な新しい事業についてまさにやっていただいた、モデル事業をしていただいた、こういうことでございます。

○本多委員

 世の中には、余り効果はないけれども悪化はしないような、若干効果があるという事業がたくさんあるんですよ。そういう事業でしたらこういう調査でいいのかもしれません。しかし、これだけ悪化が出ているんです。新聞にも、きょうお配りしましたけれども、一六%が悪化というような、大きく読売や産経さんに書いていただきました。こういうデータが出ているんですよ。(発言する者あり)いや、本当に笑い事じゃないんですよ、自民党支持者が多く読んでいる新聞ですから。これはどういう影響が出るんですかね、説明。 ですから、対照実験しない理由をお答えください、もう一回。



○尾辻国務大臣 まず、今のお話でありますけれども、一六%が悪化という話でありますけれども、これも、四三・九%が改善をされておるという改善の数字が出ております。 それから、先ほど申し上げましたように、悪化といいましてもこれはあくまでも要介護度の話でございますから、その悪化はまたいろいろな条件もあろうと思いますし、今おっしゃるように、ほかと比較してこれをまた見るものというのとまたモデル事業のねらいというのは違うというふうに理解をいたしております。

○本多委員

 私は、そういう調査もしっかりとすれば、お年寄りの体調というものが三カ月でどう変化するのかという普通の場合というのがないと、これだけでは、効果があると言われても、これだけ悪化が多いということで、判断がしにくいということをしっかりと申し上げておきたいと思います。

 それでもう一点。私、この法案を見ていまして、特にここのところは明らかにおかしいと思いまして、何とかしてほしいと思っているんですけれども、百歩譲ると、私たちの党がずっと求めている年齢の拡大ぐらいしっかり入れておいてくだされば、ほかのところはいろいろ大変だけれどもという考えはあるんですよ。ところが、この附則の「被保険者及び保険給付を受けられる者の範囲について、」というところなんですけれども、馬淵委員と議論して、これは範囲の拡大だということは答弁いただきましたよね。もう一回確認をお願いします。

○尾辻国務大臣

 私どもが普遍化という言葉で申し上げてまいったもの、それはそういう意味を持っておりますし、それから、率直に私どもとしてそういうことを検討したことは事実でありますということを申し上げました。

○本多委員

 検討したのは事実なのは知っていますよ。この法の附則の意味が、範囲の拡大について検討を行い措置を講ずるという読み方でいいのですねと聞いて、それはイエスですよね。

○尾辻国務大臣

 申し上げておりますように、被保険者、受給者の範囲の拡大ということがずっと議論されたわけでありますから、そしてそのことは附則に述べられておるというふうに解釈をしておるということは申し上げたところであります。

○本多委員

 答弁を変えないでいただきたいと思います。 これは範囲の拡大を示しているということで今答弁をいただいたと思いますが、だとしたら、きちんと範囲の拡大と書いたらいいんじゃないですか。書いたとしても、その後にだらだらだらだらまた見直しとか検討とか書いているのですから、お得意の先延ばしだってすることはあり得るのかもしれない。しかし、ここにはちゃんと、範囲の拡大ぐらい法文に書いてもいいんじゃないですか。それを書けない理由は何なのですか。

○尾辻国務大臣

 これは、申し上げておりますように、被保険者、受給者の範囲の拡大、そして制度の普遍化を図るということは、この介護保険の議論が始まったときからの大変大きな議論でありますから、ずっとこの議論は続いてきた、もう御案内のとおりであります、申し上げるまでもありません。このことについて、これも何回も申し上げましたように賛否両論ありますから、その賛否両論を踏まえて私どもはこういう附則の書き方にさせていただいたということでございます。

○本多委員

 範囲の拡大について賛否両論があるのですから、範囲の拡大についてさらに検討するということは何にもおかしいことじゃないんですよ。別に範囲についてなんて、そんなこと、範囲の拡大について賛否両論があるということはわかっていますよ。

 いろいろな事情があって、今回先延ばしにしたことはけしからぬですけれども、私は、このことをしっかりと法律の中に書き込んでいただくことが今後の議論のために重要だということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。